恋愛列車・シアワセ1号の発車

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      ●私の兄は「鉄っちゃん」でした●


      鉄道オタクだった私の兄。彼とは年齢がふたつしか違わないこともあり、私も小さいころから彼の影響を受けて育ちました。大学生だったころの兄の部屋には、北は北海道から南は九州まで、日本全国を旅行して撮影した、ローカル鉄道の写真がズラリ。大学でのサークルはもちろん、「鉄道研究会」です。兄とは仲がよかった私も、なんどか彼の「撮影旅行」のおともをしたことがありましたっけ。
      そんな兄が、鉄道会社に就職が決まったときには、家族一同が大喜びでした。夢に向かって着実に歩んでいく兄は、就職から2年後の夏に、大学時代に同じサークルだった女性と結婚。会社の同僚や大学時代の仲間がたくさんつめかけてくれた結婚披露宴は、大いに盛り上がりました。

      ●余興の席で、仰天の場内アナウンス●


      披露宴といえば、参加者の余興。社交的な性格で人望があった兄だけに、当日はさまざまな余興が披露されたのですが、そのなかでも一番強く印象に残ったのは、「恋愛列車」の場内アナウンスでした。この出し物を考えてくれた人は、現役の車掌さん。兄の会社での同僚です。
      「――みなさまお待たせいたしました。始発は○○大学鉄道研究会駅、恋愛列車・シアワセ1号。本日○○年6月25日▲▲時××分、##結婚式場駅を発車となります。お見送りのかたは、黄色い線の内側までおさがりください。」
      マイクを片手に、あの独特の口調で発車のアナウンスをおこなう車掌さん。周囲を目視して安全確認をしたあとで、白い手袋を振り、笛をピーッと鳴らします。



        ●これぞプロの技?ファンにはたまらない●


        「――本日ご乗車いただいた●●君、◆◆さん。当列車はおふたりの愛情で駆動する、最新式の動力システムを採用いたしております。列車の運行には万全を期しておりますが、ときに思わぬ揺れが発生することもございます。ご乗車のおふたりにあたりましては、くれぐれもお気をつけて――」
        いつもの口調で、スラスラとメッセージを読みあげる車掌さん。言葉のはしばしにユーモアがあふれていて、会場のすみからクスクスと笑い声が聞こえます。
        「――終点の幸福駅まで、おふたりの途中下車はご遠慮させていただいております。運行は各駅停車となりますが、その乗り心地のよさは、多くのお客さまからご好評をいただいていますのでご安心ください。恋愛列車・シアワセ1号。まだまだ発車したばかりでございます――」
        思わず赤面してしまいそうな甘い言葉。でも、プロの方が読みあげると、なんだか妙にシックリときてしまいます。立て板に水を流すような名アナウンスに、場内の反応も上々。車掌さんが話し終わったあとに、周囲からは万雷の拍手。鉄道マニアの兄と、同じ趣味をもつ奥さんにはたまらない演出だったのでした。車掌さん、ありがとう!
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